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導入事例

チームの生産性向上でコネクティビティの未来を切り開く

NTTドコモ、ビジネス現場での生成AIの活用を促進

90%

ユーザーのLLMの利用状況分析を 90% 効率化

業種: 通信業
クラウド: Azure

NTTドコモは、約9,000万人の加入者にサービスを提供する日本の携帯電話事業者であり、5G、LTE、ブロードバンド、国際サービスを通じて個人をつないでいる。企業向けには、効率性と成長を促進する通信インフラと端末機器を提供している。NTTドコモは、ビジネスの現場で生成AI(GenAI)を活用することで顧客満足度の更なる向上させるため、「LLM付加価値基盤」と呼ばれるプラットフォームを開発した。しかし、社内での活用度合いには偏りがあり、利用状況を可視化することで機能・性能の強化策を継続的に実施できるサイクルが求められていた。そのため、NTTドコモはDatabricks Data Intelligence Platformに投資し、ユーザーの利用状況を克明に分析し、LLM付加価値基盤の活用を強力に推進した。結果として機能・性能の改善の意思決定をサポートし、分析を手作業で処理・分析する時間を90%削減することに成功した。

データのボトルネックが実用的な洞察を阻む

日本の大手通信事業者であるNTTドコモは、「つなごう。驚きを。幸せを。」をブランドスローガンとし、「つなぐ」ことを通じて生活者への新たな価値の提供やコミュニティの活性化、ビジネスにおける構造改革、DXの支援、様々なパートナーとの価値共創を目指している。NTTドコモは、このような意欲的なビジョンの実現を見据え、テクノロジーを駆使して顧客体験を最高のものにするため、グループ内の様々なビジネス現場で生成AIを活用できる「LLM付加価値基盤」の提供を開始した。2025年2月現在、LLM付加価値基盤のMAUは約10,000人、月間コール数は約300万に達しており、様々なユースケースで活用されている。LLM付加価値基盤は、ユーザーがLLMを利用する際の利便性向上、セキュリティ確保、信頼性・安全性確保、多様なLLMとの連携といった機能をWebアプリケーションを通じて提供している。

例えば、ネットワーク品質改善チームは社内のLLMツールを使用して顧客のソーシャルメディアデータを分析し、1日あたり20,000件のデータを処理することで、問題をより迅速に検出しました。一方、コンタクトセンタ関連の部門は、ドコモショップスタッフからサポートセンターへの問い合わせのチャットログからLLMを活用してFAQを作成することで業務を効率化しました。

一方で、単に基盤を提供するだけでなく社内の幅広い部門のユーザーに実際に活用してもらうためには、継続的な利用状況の分析と改善が欠かせない。当初はユーザーによる利用ログを分析するためにExcelやJupyter Notebookを使用していたが、LLM付加価値基盤の成長に伴って課題が生まれていた。

データ量の爆発的増加 : LLM付加価値基盤のDAU(Daily Active User)が増加するにつれて、ログ出力が膨大となり、ローカルのExcelやJupyter Notebookでは対応しきれなくなっていた。
データの品質と整合性 : 手動作業によるデータの不正確さや重複、不完全なデータが頻繁に発生し、その結果、分析結果や意思決定に悪影響を及ぼしていた。
データのプライバシーとセキュリティ : ExcelやJupyter Notebookでは社員それぞれの開発用PCでログが保持されており、機密情報が含まれるログの漏洩リスクを抱えていた。

これらの課題に対し、Databricksは手動プロセスを自動化し、大量のログを安全かつ高速に処理する能力を備えていた。それでいて、開発や運用の負荷がとても少なく済む。

NTTドコモ サービスイノベーション部 の黄 祺佳氏は次のように語る。
“ハイパースケーラーのクラウドサービスが複雑化していくなかで、Databricks Workspaceの操作画面はシンプルで使いやすく、ワークフローやSQLウェアハウス、ノートブック、Unity Catalogの画面を行き来するのもシームレスで開発の際のストレスが少なかったと感じています。実際にDatabricksでダッシュボードの構築を始めてから社内の審査プロセスなどの時間を除けば、コーディングやワークフローの設定自体は本当にスムーズに完遂することができました。”

Databricksでチームの生産性を高める

NTTドコモは、ダッシュボード構築のためのデータ取り込みから整形・加工、そして分析用のデータマートの作成と公開までを一貫してDatabricksで行っている。またより高度な分析として、ログ分析そのものにもLLMを活用し、ユーザープロンプトやレスポンスからのエンティティ抽出やカテゴリ分類を行うことで活用領域や使われ方を詳細に分析している。そうした分析に使用するAzure Open AIのgpt-4oといったLLMとの連携にも、Databricks上でMosaic AI Model Servingを活用している。「Databricksを使用することで、LLMのログデータを一元管理し、ユーザーがLLMをどのように利用しているかを迅速に分析することができます」と、中村氏は説明する。

まず最初に分析環境の構築が必要だったが、Databricksの場合にはとても容易に構築できた。コードを実行するためのSQLウェアハウスやコンピュートリソースの起動も必要なときにデータサイエンティストがワンクリックで起動できるため、インフラエンジニアなしで開発環境の構築、管理ができている。次に、取り込みから加工、データマート作成といった1つ1つのコードはAIアシスタント機能等を持つDatabricksのノートブック上で開発した。Databricksノートブックはユーザ間で共有し、相互にレビュー、コメント等が可能なためペアプログラミングがとても効率的に行えたという。そして実装してコードは、Databricksワークフローを使って本番ジョブ化した。手動で更新実行/バージョン管理/エラー検知していたデータ加工処理はすべて自動化できるようになり、運用管理の効率化につながった。作成されたデータマート等の資産は、Unity Catalogによるきめ細かい権限制御を行った。カタログ/スキーマ/テーブル単位に加え、行/列レベルのマスクやフィルターも設定可能のため、データの権限/セキュリティ管理は効率よく実現することができた。 

さらに、ダッシュボードより一歩進んだ新たな分析ツールとしてDatabricksのGenieも活用した。Genieはチャットスタイルのインターフェースで自然言語のみでデータを分析、可視化することができる。この分析の容易さを活かし、経営層等のステークホルダーからの分析ニーズに迅速に応えることにも成功している。また、Genieでは分析を容易にするだけでなくUnity Catalogと統合されたガバナンスを備えており、セキュアな分析環境を実現している。ここではカラムに対する閲覧権限機能も利用し、例えばログ分析の際にユーザのメールアドレスなどの個人情報はユーザー側で閲覧できないよう制御を行う等している。NTTドコモのLLM付加価値基盤チームではまず自部署内でGenieを展開しているが、このガバナンス機能によって今後他部署にも展開することも容易であるという。

自動化で手作業の時間を90%削減

Databricksは、LLM付加価値基盤の利用状況分析のプロセスを変革し、労働集約的な手作業のワークフローを、効率性とイノベーションの両方を促進する自動化されたプロセスに置き換えた。かつては毎月66時間を要していた作業が、今ではわずか6時間で済むようになった。これは90%の改善であり、チームはより価値の高いプロジェクトに集中できるようになった。

この取り組みによって作成されたダッシュボードは現在、ドコモグループ各社に公開されており、部署別の月間リクエスト数やアクティブユーザ数に基づく LLM活用推進施策や新機能リリースなどの効果測定に加え、ステークホルダーへの迅速な利用状況の報告、利用ユースケースの可視化を通じたLLM付加価値基盤の活用推進に大きく貢献している。また、今後以下のような形でのダッシュボード活用も想定しており、LLM付加価値基盤に必要とされる機能の特定と開発、ノウハウの収集と展開、さらにはLLM未活用の組織の特定とそれに対する活用推進を実施していく。

  • ユーザーの利用傾向に基づく既存機能改善や新規機能開発のより良い判断
  • リクエスト数の多い部署を把握して効果的な活用推進施策をインタビューし、社内で活用ノウハウを共有
  • ユーザ数の少ない部署を特定してLLM付加価値基盤の利用方法に関するハンズオンを実施

 

“Databricksを使うことで、ユーザーログの分析やダッシュボードの作成をこれまで以上に速く、効率的に行えるようになりました。かつては何時間もかかっていた手作業のタスクが自動化され、今ではより良い意思決定を促進する洞察を見つけることに集中できています。” と黄氏は説明する。

またGenieには更なるデータ民主化の可能性を感じており、NTTドコモでも今後はLLM付加価値基盤のログ分析以外の用途にも拡大したいと考えている。
LLM付加価値基盤の利用状況をより速く、深く、簡単に分析できる仕組みをDatabricksによって実現したことで、NTTドコモは将来のイノベーションを加速するための準備をまた1つ整えた。「Databricksの活用で、より鮮度と質の高い利用状況分析を通じてユーザーへの提供価値を最大化できる一方で、我々開発チームは次のイノベーションに向けてリソースを集中できるようになりました」と中村氏、黄氏は締めくくった。同社は現在、新たなGenAIのユースケースを模索し、データ駆動型の意思決定アプローチを推進し、持続的なオペレーショナル・エクセレンスと次世代アナリティクスの基礎を築く態勢を整えている。